人気ブログランキング | 話題のタグを見る

クリスチャン・ボルタンスキー展

  
クリスチャン・ボルタンスキー展_d0100845_23164470.jpg


グランパレで今現在行われている
クリスチャン・ボルタンスキー展に行って来た。

彼の作品は何度か目にした事があったし、
前々から注目していた作家さんだ。

今回の作品にも彼のテーマ
『不在』と『死』とが感じられた。

グランパレに入るとすぐに、
ブリキ缶の壁が
私達の前に立ちはだかる。

そこには一つ一つ番号がふってあり、
それが誰かの持ち物を納めているものであることが
想像出来る。

そしてそれは少しずつ、
無縁仏の墓のようにも思われて来た。
名もないものの骨を納めてある骨壺は
錆びたブリキの缶なのだ。


その無言で立ちはだかる壁を抜けると、
小高い山があるのが目に入った。

それは丘のように積み上げられた
色とりどりの洋服たちであることがわかる。

洋服たちは色褪せて毛羽立ち、薄汚れて忘れられている。

それらがどこかで誰かと生きてきたことがわかる。

匂いやその生地に刻まれたしわから、
その持ち主だったものの痕跡を残している古着たち。

それらは使い古されて、そして捨てられた。

それは私に死を感じさせる。

山のように積み上げられた古着は
まるで寿命を全うした後の使い古された体のようだ。

服の丘の上空には真っ赤なクレーンが待ち構えている。

クレーンは定期的に下りて来ては、
それらの古着の中から何着かをふるいにかけ、
掴み上げて、空中にばらまくのだ。


服の山の手前にはどこか工場を思わせる、
四角く区切られた空間が無数に
広がっている。
錆びた鉄柱によって四角く区切られた床の上には
直に、古着たちが横たわっている。

それは畑のように、あるいは工業団地のように、
規則正しく区切られて並び、
鉄柱から吊るされた寒々しい白熱灯の光に
晒されている。

私達はその間を練り歩く事が出来る。
辺りには悲鳴のような機械の働く音が響いていて、
それに心臓の鼓動のような音が混じり合って
聞こえて来る。

床に直に並べられた洋服たち。
子供の服や女物の上着、
作業着を思わせる労働階級者の着るような厚手のコート。


それらは自分達の番を待っているのだ。
冷たい床の上で。

あの丘の上に運び上げられ、
そして空中に舞う事になる瞬間を。

それは着実に訪れるのだ。

古着たちはそこから動く事が出来ない。

自分たちの運命を免れることはできない。


私はこの展示から最初強制収容所を思った。


クリスチャン・ボルタンスキー展_d0100845_23183145.jpg



クリスチャン・ボルタンスキー展_d0100845_3113412.jpg



  ☆☆☆☆☆
ブログランキングに参加しています!
応援よろしくおねがいします。
人気ブログラン

    <br class=